「高市、イラン、ロシアと交渉せよ」は本当に正しいのか

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ここ数日、ネット上では高市総理に対して

「なぜイランと直接、個別交渉をしないのか」
「ロシアからナフサを輸入すればいいだろう」
といった批判が目立っています。

いま高市総理に向けられている批判について

中には「無能」「対応が遅い」「仕事をしていない」といった、かなり感情的な言葉まで飛び交っています。

ただ、こうした主張は一見もっともらしく見えても、少し冷静に整理すると、かなり危うい面があります。

とくに「日本だけが個別にイランと話をつければいい」という発想は、短期的には「解決策」に見えても、中長期的には日本の立場を大きく傷つけかねません。

私は、高市総理がイランといかなる場合でも一切接触すべきではないと言いたいのではありません。

ただし、もし交渉するのであれば、かなり慎重であるべきだと考えています。

なぜイランとの個別交渉は慎重であるべきなのか

イラン側は「日本なら通してもいい」と受け取れるような姿勢を見せているとも言われます。

しかし、それをそのまま善意と受け取るのは危険です。

むしろ、そこには「日本だけ特別扱いしてやる代わりに、何を差し出すのか」という駆け引きが含まれている可能性が高いと見るべきでしょう。

そのうえで、個別交渉をするかどうかを判断するについては、少なくとも次の7つの点は念頭に置く必要があると思います。

日本が依存しているのは主にイラン産ではない

日本が中東から調達している原油や関連資源の中心は、主としてUAEやサウジなどです。

つまり、日本のエネルギー安全保障は、イランとの関係だけで成り立っているわけではありません。

イランはGCC(湾岸協力会議)諸国と対立している

イランは、地域の安定を脅かす行動(軍事行動を含む)を繰り返してきた当事者でもあります。

その相手国と日本が裏で個別交渉を進めれば、当然ながら日本の主な石油輸入先であるUAEやサウジ等の不信を招くおそれがあります。

そもそもイランにホルムズ海峡の通航を許可する権限はない

ここは非常に重要です。
ホルムズ海峡はいわゆる「国際海峡」であり、国際的な海上交通の要衝。本来、特定の国が「通してやる」「止める」と勝手に決めてよい性質のものではありません。

つまり、日本がイランに頭を下げて「通してください」とやる構図自体が国際法に反することなのです。

日本が金を払えば、それが他国を攻撃するための軍事資金に転じる可能性がある

仮に「安全確保」や「便宜供与」の名目で日本が何らかの譲歩や資金提供を行えば、それが結果としてイラン側の軍事・テロ活動を支えることになりかねません。

極端に言えば、日本が支払った莫大な金が日本が石油の調達先として頼っているUAEやサウジなどを攻撃するドローンやミサイルなどに変るかもしれないわけです。

それを知ったUAEやサウジが
「日本は結局、我々の敵側についた」と受けとめれば、もう石油を輸出してはくれなくなるでしょう。

仮に「話がついた」としても、安全は保証されない

ここも見落とされがちです。
たとえイラン政府が「日本船は大丈夫だ」と言ったとしても、革命防衛隊やフーシ派など、現場で軍事攻撃・破壊活動・テロ行動を取る主体まで完全に統制できる保証はありません。

紙の上で合意したからといって、実際の海上リスクが完全に消えるわけではないのです。

日本が抜け駆けすれば、国際協調を壊す

現在この問題は、日本一国だけの話ではなく、30カ国以上が連携しながら対処している国際案件となっています。

その中で、日本だけが利己的にイランと「取引」したとなれば、国際社会から、

「自分たちだけ助かればそれでいいのか」と
見放されても仕方ありません。

外交や安全保障の世界では、こうした信用の傷はあとから非常に重く効いてきます。

最悪の場合、国際社会が日本の裏切り行為に反発し、何らかの経済制裁を課してくることも絶対にないとは言えません。

一度前例を作れば、今後ずっと足元を見られる

仮に今回、日本がイランとの個別交渉で一時的に利益を得たとしても、その成功体験は次の脅しの材料になりえます。

つまりイラン側からすれば、
「困ったときはまた脅せば、日本から何かを引き出せる
という前例になるわけです。

これは一度きりの話では済みません。

今後の外交全体に悪影響を残す可能性があります。

ナフサはロシアに頼るべきなのか

次に、ロシア産ナフサをめぐる議論です。

ネット上では、こんな指摘が拡がっています。

「かつて高市早苗氏がイキって、Xでロシアを煽ったから、今さら頼れなくなった」と。

しかし、問題の本質はそんなところにはありまえん。

ロシアから安易に資源を買うというのは、単なる「調達先の話」ではなく、ウクライナに対して侵略戦争を続ける国家に資金を流すかどうかという問題が絡んでくるのです。

しかも、一度そうした依存に戻れば、将来的にまたロシアからエネルギーを外交カードとして突きつけられる危険があります。

短期的に「今だけ安く、今だけ足りればいい」という発想で動くと、あとでより大きな代償を払うことになりかねません。

この点については、単なる感情論ではなく、国家としてのリスク管理の問題として見る必要があります。

「医療崩壊が目前」という話は本当か

もう一つ、かなり拡散しているのが、
「ナフサ不足で、4月にも医療崩壊が起きる」
という類の話です。

ですが、現時点では、こうした言説はかなり誇張が入っていると見るべきでしょう。

政府側(木原官房長官)の説明では、
国内在庫が約2か月分、代替調達や国内対応を含めれば、さらに2ヶ月ほどの猶予がある、とされています。

つまり、少なくとも「いますぐ医療が止まる」というような切迫した状況とまでは言えないようです。

もちろん、だから安心しきってよいという意味ではありません。

こういう時こそ、政府には先手での調達・代替確保・業界連携が求められます。

ただ、必要以上に不安を煽って、
「今すぐロシア」「今すぐイラン」
と短絡的に飛びつかせる議論も、やはり冷静さを欠いていると言わざるをえません。

まとめ

今回の問題で重要なのは、
目先の不安を消すために、将来の国益を削ってよいのか、という点です。

私は、高市総理に求められているのは、
場当たり的に「何かやった感」を出すことではなく、
日本の外交・安全保障・資源調達をまとめて壊さない判断だと思います。

イランとの接触も、ロシアとの資源調達も、絶対に触れてはいけない聖域だと言うつもりはありません。

ただし、それをやるなら、相当な条件整理と国際調整が前提となります。

少なくとも、ネット上の
「さっさと話をつけろ」
「今すぐ頼れ」
「プライドを捨てて頭を下げろ」
という罵声に従えばいいという単純な話ではありません。

この問題は、感情で処理すると危ない。

だからこそ、いま必要なのは、焦りではなく、冷静な現実認識だと思います。

そういう意味では、高市政権は結構うまくやっていると評価できるのではないでしょうか。

Last Updated on 2026-04-01 by