高市総理が日本維新の会を説得し、議員定数削減法案の今国会での成立を断念する方針を固めました。
「敗北」と見るのはまだ早い
このニュースだけを見ると、「野党に押し切られた」「高市総理が譲歩した」と感じる人も多いかもしれません。
しかし、本当にそうでしょうか。
政治は目先の勝ち負けだけではありません。
少し視点を変えて見ると、今回の判断は秋の臨時国会を見据えた布石だった可能性も見えてきます。
今回は、その理由を順番に見ていきたいと思います。
3つの重要法案、その優先順位が変わった
今回の国会で高市政権が成立を目指していた重要法案は3つありました。
一つ目が皇室典範改正案。
二つ目が維新が強く求めていた議員定数削減法案。
そして三つ目がこれも維新がこだわってきた大阪の副首都構想に関する法案です。
当初は3つとも成立を目指していました。
しかし最終的には、定数削減だけを秋に先送りし、皇室典範改正と副首都構想の2つを優先する判断になりました。
これは「定数削減を諦めた」というより、優先順位を整理したという見方もできます。
さらに、副首都構想を前に進めることで、維新との協力関係の維持にもこだわりました。
現実的な政治判断だったと言えるでしょう。
混乱のきっかけは森議長の判断
今回の流れを大きく変えたのが、森英介衆議院議長の対応でした。
森議長は各党との十分な調整がないまま、皇室典範改正だけを最優先に進める考えを示しました。
これによって国会全体のスケジュールが狂い、調整は一気に難しくなってきました。
高市総理も、この動きにはかなり驚いたと報じられています。
もちろん、会期を延長し、60日ルールを使って強行採決する方法もありました。
しかし、それをすれば「数の力で押し切った」という批判は避けられません。
政権へのダメージも決して小さくなかったでしょう。
さらに最近は、「中傷動画」や「サナエトークン」あるいは「サナエタオル」の問題など、本来の政策とは関係のない週刊誌ネタの些末な話題ばかりが取り上げられていました。
高市総理としては、こうした不毛な議論に時間を使うより、NATO首脳会議など外交・安全保障に力を注ぐ方が国益につながると思っていたのではないでしょうか。
先送りで苦しくなるのは野党かもしれない
今回の判断で苦しくなるのは、意外にも野党の方かもしれません。
立憲民主党などは以前から、「身を切る改革」を繰り返し訴えてきました。
野田民主党政権では、消費税増税と引き換えに議員定数80削減を掲げていたこともあります。
ところが今回は、自分たちの議席が減る可能性がある法案とみて反対に回りました。
国民から見れば、「言っていることとやっていることが違うじゃないか」と映る可能性があります。
しかも今回の削減対象は比例代表のみとなっていました。
比例代表では、本来落選した候補が復活当選するケースも少なくありません。
また、小選挙区で死に票をすくい上げる効果もあります。
そのため、特に野党側にはより影響が大きいと言われています。
まとめ
本当の勝負は秋の臨時国会
今回の定数削減は廃案になったわけではありません。
秋まで先送りになっただけです。
だから今回を「高市総理の敗北」と決めつけるのは早計でしょう。
政治では、一歩引くことで次の勝負を有利に進めることもあります。
高市総理は、皇室典範改正と副首都構想を優先しながら、定数削減という難しいテーマを秋へ持ち越しました。
そして秋には、野党も自分たちがこれまで掲げてきた「身を切る改革」と向き合わざるを得なくなります。
賛成すれば議席が減る可能性がある。
反対すれば、「改革に反対した」と批判される。
秋の臨時国会は、与党だけでなく野党もワガママは許されません。
今回の判断がどんな結果につながるのか。
その答えは、秋の国会ではっきり見えてくるのではないでしょうか。
